受講生さんの声
2023年度に研修を受講された、佐世保市社協の池田さん、永安さんのお二人にお話を聞きました
                      聞き手 研究員 島津屋賢子

「困りごとがスタートなんだと気づきました」

ー 長崎県佐世保市の推しは?

池田さん:佐世保市北部の吉井町というところにある福井洞窟という史跡が、学術的価値が高く、いわゆる国宝級といわれていて、国内でも最古の特別史跡に指定される見込みです。また、佐世保の海の、九十九島という大小の島々が並んでいる中に、黒島(くろしま)というところがあります。佐世保港からフェリーで50分くらいの有人島です。現在も島民の8割がキリスト教徒で、黒島教会という大変綺麗な教会がありますが、潜伏キリシタンの島と言われています。キリスト教関連遺産ということで、島全体が世界遺産に認定されています。

 

ー 佐世保市社協さんの取り組みをご紹介ください。

池田さん:黒島はサービスが少なく、内海離島だといっても過言ではないため、マンパワーを養成することが地域の課題でした。島民と、医師・保健師などの専門職と、長崎大学と社協とでラウンドテーブルでディスカッションし計画等を立てました。実践の一つが教会の信徒会館で開いた「ハッピーカフェ」です。そこで、介護技術や知識を学んだ地域のリーダー9名を中心にカフェとか食事サービスが始まりました。

ー 厚生労働省委託オンライン総合研修(以下、本研修)を受講されたきっかけは?

永安さん:池田次長から、どうだろうかというお話しがあったのが最初です。

池田さん:2022年から佐世保市社協は、市から重層的支援体制整備事業※の移行準備事業※を受託し、多機関協働事業をやっていたんです。地域づくりとなると、地域福祉課の職員が研修を受講すべきだという考えですすめました。2023年度から(地域福祉活動計画の)第4期計画がスタートしていますが、2022年度は計画策定していたところでございまして、(佐世保市社協の)重点プロジェクトとして重層的支援体制の整備を掲げていましたので、受講をお願いしました。


※重層的支援体制整備事業

重層的支援体制整備事業は、2020年の社会福祉法改正で法制化されました。地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を整備するために、①相談支援(属性を問わない相談支援、多機関協働による支援、アウトリーチ等を通じた継続的支援)、②参加支援、③地域づくりに向けた支援を市町村が一体的に行う事業です。

※重層的支援体制整備事業への移行準備事業

移行準備事業は、重層的支援体制整備事業の実施に向けて、市町村が体制整備に取り組むことを目的とし、庁内外の関係者・関係機関との連携体制を構築するための取組や多機関協働の取組を行う事業です。

― 数ある研修の中から、本研修を選ばれた理由は?

池田さん:日本社会事業大学の主催ということ、著名な先生方が講師をされているということ、研修の仕組みが良いこと、が理由です。研修の仕組みというのは、研修が5時以降の時間帯であること、オンライン化されているということです。また、3か月の長期プログラムですので、グループディスカッションなどで、他機関・多職種の方々と知り合い、人的なネットワークが広がるのでは、という期待もありました。

永安さん:5時以降の研修の仕組みは、私の生活スタイルでは、受けやすかったです。通常業務が終わった後に集中する時間が確保できたこと、職場のパソコンから参加できたことがよかったです。


― 本研修を受講される前と後とでなにかご自身に変化がありましたか?

永安さん:私は地域福祉課の地域福祉係に所属しており、地域づくりや福祉教育等を担当しています。研修で重層的支援体制整備事業について学ぶ中で「やっぱり個別支援で困りごとがスタートなんだ」と気づきました。困っている方々が生活しやすいサービスが重要で、その次に予防的対策としての地域づくり。この順番が大事だということがわかりました。例えて言うなら、何を植えるか分かっていない中で畑を耕している状態だったのかと。佐世保市社協でいうと、相談部門と地域福祉課が連携を密にとって、自分が担当しているエリアにあるニーズを把握してから事業を組み立てていくということをやっていきたいと思うようになりました。

― 本研修を受講されたメリットを教えてください。

永安さん:全国の受講生さんと出会ったことが大きいです。新しい地域福祉活動計画を作る時期でしたので、他の受講生さんとつながったことで情報収集ができました。別のことでも個別に情報収集ができたことは、仕事を進めるうえで非常に役立ちました。


― 池田さんは、永安さんに変化に気づかれていましたか?

池田さん:地域福祉課の事業や業務にどのような法的な根拠があるのか、将来的にどういう目標があって、今の段階でどういう動きをすればいいのか、ということが分かってきたという感じがしていて、業務の質というところで、変化があったと感じています。

― 最後に、こういう研修なら職員を派遣したいというアイデアを教えてください。

池田さん:福祉分野は新たな政策とか制度改正が頻繁にありますので、法改正に基づく政策的な研修なら派遣したいです。一方で、座学だけではなく市町村のフィールドに出向いて、そこを題材として一時的に活動する、よその職員と交流する、というような研修があれば活用したいと思っています。

― 本日は貴重な受講体験談をお聞かせくださり、ありがとうございました。

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