厚生労働省委託オンデマンド総合研修は、2022 年から「個人」に加えて「団体※」枠での申込みを始めました。翌2023 年に 28 名様分(団体 5 /個人 3 )の申込みをいただいたのが東京都文京区さんでした。2024 年も 23 名(団体 4 /個人 3)の皆様に受講いただきました。そこで、どのように本研修を活用されているのか、お話をうかがってきました。
※受講料:個人5,000 円/団体20,000 円(視聴人数 5 名まで)
― 文京区の皆様で、厚生労働省委託オンデマンド総合研修を受講されるようになったきっかけは?
三島さん(文京区役所 地域共生社会推進係 事務職係長):文京区では、今年度(2025 年度)から重層的支援体制整備事業を本格実施しました。昨年、一昨年は移行準備期間でした。前任者より、手挙げ方式だと遠慮する方もいるので、参加枠を確保して皆さん(区職員および委託事業者)が受講できるような体制を作ったと聞いています。
― 本研修を選択された理由、継続されている理由は?
三島さん:各分野、素晴らしい先生方が講義されていること。カリキュラムに偏りがなく、重層メイン担当でない方が視聴しても、障害分野・高齢分野等ちょっと他課の仕事も知りたいと思ったら、何回でも見られる。社会事業大学の研修ですから、間違いないなというところが一番でした。
― ありがとうございます。この研修これがよかったということを教えてください。
髙松さん(保健福祉政策推進担当 保健師主査):重層を始めるのにあたり、関係課と一緒に研修を受けたことで、文京区の地域課題を共に考え、他自治体で課題をどのように把握されているかなどを、ともに学ぶ機会となりました。支援者が同一の内容を学べることは非常に重要です。また、専門分野外の研修受講は難しい現実がありましたが、住まいにクローズアップされた講義を、すべての受講資格のある人が見ることができました。必要に応じて他分野も学ぶことができる点で優れています。厚生労働省のワーキングに入られた先生が、きら星のごとく講師を務めておられ非常に贅沢な研修です。学生に戻った気持ちになりました。
石田さん(福祉保健政策推進担当 保健師):自分の担当している分野だけでなく、ほかの分野の知識も学べるところがいいなと思いました。オンデマンド研修なので、各自それぞれが好きな時間に好きな場所で、何回でも見直せるところもいいです。なかなか時間が捻出できない、業務が多忙で視聴が難しい方などにとって、そういった機能があるのは使いやすいなと思いました。
三島さん:受講表を庁内ドライブで共有して、視聴状況を把握できるようにしていました。こういうの見たんだけど面白かったとか、これ結構良かったとか、情報共有にも活用しました。驚いたのが、忙しい委託等関係機関の方が全講義を視聴されていたことです。やっぱり支援をされていると充分じゃないなと思われることがあるのでしょうか、区民に直接会って一緒に動く方たちが受講してくださるというのは、必要な研修なんだなと思いました。
― 受講後、組織がどのように変化したか、あるいはご自身がどのように変化したか、お聞かせください。
宮城さん(地域共生社会推進係 社会福祉士・精神保健福祉士):他の自治体さんが、重層に関する発表されているのを見て、自分も頑張ろうって思いました。ちょうど研修が始まった時期に重層の担当者と他の部署との温度差を感じており、今後について悩んでいましたが、他の支援機関の視聴状況を見て、自分が想像していたよりも多くの方が受講していることがわかり、とても嬉しく思いました。
三島さん:私自身、事務職なので、あまり支援現場が分からないという部分がありまし た。障害分野におけるピア活動などは、特長があって、ちょっとびっくりしましたが、モチベーションを上げるのに役立ちました。どうしても事務職目線だと、この事業が始まってどんな補助金がもらえるのかとか、どんな仕組みを作ればうまく回るのかとか、技術的な方に流れていくんですが、その前にもっと学ぶべきことがあるのではないかと感じました。また、支援者と一緒にチームで受講できたこともあり、すごく励みになりました。
土江さん(地域共生社会推進係 事務職):私は入職二年目の職員ですが、いろいろな分野を、しかもオンデマンドで手軽に見れることで、新しい知識を得られたのがすごく大きいです。他のいろんな研修にも興味を持てるようになった、というのが自分としての変化かなと思います。
宮城さん:私は社大の卒業生なので、菱沼先生とか下垣先生は、当時から素晴らしい先生だっていうのは存じ上げていて、その先生たちの講義が聞けることに、感動しました。先生が講義してる。先生、菱沼先生!みたいな(笑)。ちょっとファン目線で、懐かしくもあり、大変有意義な研修でした。
― 懐かしい先生に会いたくて本学卒業生が受講されるケースは、あります。他大の先生方も、実は社大同窓生ということもよくあります。そういうところは本学の強みです。
― 今後の研修で取り上げてほしいアイディアがありましたら、お聞かせください。
石田さん:他の自治体がどのように、その地域の特性を生かしながら、この重層の事業を展開しているのか、そういった取り組みを聞ける機会があると嬉しいなと、思います。
髙松さん:行政の職員は法律に基づいて業務を行い、分掌を定めて責任を持った業務遂行を目指します。隙間の課題を先生方はどう考えているのか知りたいと思いました。「支援体系の中からこぼれ落ちてしまうような対象を先駆的にどのように支えているか」は、取り上げてほしいテーマのひとつです。菱沼先生の講義「事例についてのアセスメント方法」は、同僚にこれだけは見てほしいと伝えました。私の中で地殻変動が起こった研修でした。重層を目指す職員や支援者に業務に対する情熱やマインドを呼び起こし、現在地を確認できる体験は貴重です。
髙松さん:東京都23 区の中で毎回、選挙の投票率で一番は文京区。大事なことだと思います。
― 文京区さん、すごい。とても大事なことですね。本日は、貴重なお話をありがとうございました。